グレーな家族

グレーな家族の中で育った愛着障害の私の葛藤

グレーな家族~家族を諦められない私のお話~♯6

私の部屋はドアを開けるとすぐに勉強机があり、扉を背にして勉強をするような環境だったのだが、どうも閉めたつもりの扉が開いていることがあるのだ。その時は自分の閉め忘れで誰かが覗き見しているなんて考えてもみなかったが、ある日トイレに行くため席を立ち扉を勢いよく開けると、「痛っ」と声とともにおでこを抑えた母がうずくまっていた。私は突然のことでとっさに謝ってしまったが、いつもならこんな時必ず怒号を飛ばす母がなぜかおとなしい。理由は鈍い私でもすぐに分かった。覗いていたのだと。

 

「ずっと覗いていたの?」と私が尋ねると、開き直った母が

「何が悪い。なにかやましいことがあるんか。」と私を疑った。

悪いことも何も、当時は携帯電話が普及していたものの、今のようにたくさん情報が飛び交っていなかった。家でできることなんか限られている。だが、自室に籠れるようになり、少しプライバシーができたことによって、私は少し強くなり、母に対する反抗心が大きくなっていた。

「そんなことない。でも覗かれるといい気持ちはしない。」

いつもなら絶対に母に言い返さない私が初めて母に盾ついた。私は内心ドキドキしていたが、私が言い返したことが気に食わない母は肩で息をするぐらい憤慨していた。日常的によく叩かれていたが、その時はおもむろに私の部屋に入り、机に置いてあった電子辞書を手に取り、勢いよく振りかざした。痛い。っと思ったのも束の間、2手3手と次々に電子辞書が振りかざされる。私は必死に身を守ったが、当たり所が悪かったのか、意識を失った。気を失う前に耳にしたのは「お前なんか産まんかったらよかった」「なんで私ばっかりこんなに苦労せんといけんのん」という言葉だった。

 

しばらくして尿意で目が覚めた。いろんなところに打ち身ができて、動くと痛かったが急いでトイレに行った。家がすごく静か。いつもなら家族が揃っていてもおかしくない時間だったが、どうやら誰もいない。

 

しばらく部屋で過ごしていると、両親と弟が帰ってきて

「はぁ~!焼肉おいしかったね~!お姉ちゃんもきたらよかったのに!」とわざとらしいくらいの大きな母の声が聞こえてきた。どうやら叩かれて気絶した私を置いてみんなで外食に行っていたのだった。